活線送電線保守ロボの資金調達は、AI×ロボで安全と継続運用を両立する流れの象徴。建設・観光の現場に応用する導入手順も解説。

インフラ保守ロボとAI活用が示す、建設・観光の現場改革
停電させずに送電線を保守する。しかもヘリコプターに頼らず、作業員が危険箇所に近づかない。 2025/12/24に発表された株式会社ハイボットの資金調達ニュースは、ロボティクスが「現場の安全」と「運用の継続」を同時に取りにいく段階に入ったことをはっきり示しました。
この動きは電力インフラだけの話ではありません。人手不足・安全管理・設備の老朽化という課題は、建設業界でも、観光・ホスピタリティ業界でも共通です。私はここ数年、現場DXの相談に乗る中で「AIは接客のためだけではない。裏側の運用を変えた企業が勝つ」と強く感じています。
本記事では、ハイボット×Ternaの協業を“現場AI導入の教科書”として読み解き、**建設業界のAI導入(生産性向上と安全管理)**の文脈で、さらに観光・ホスピタリティにも応用できる形に落とし込みます。
資金調達ニュースの要点:投資家が買ったのは「安全×継続運用」
結論から言うと、今回のニュースで重要なのは「ロボットがすごい」よりも、安全性・継続運用・脱炭素が同時に満たせる設計が評価され、戦略投資が入った点です。
株式会社ハイボットは、欧州最大級の送電事業者Terna(管理送電線は75,000km以上)のCVCであるTerna Forwardなどから、総額7億9,000万円の資金調達を実施しました。背景には、2年以上の技術・運用面の協業があり、焦点は活線(通電中)の送電線上で保守作業を可能にするロボットシステムの共同開発です。
ここで押さえるべきポイントは3つです。
- 安全:通電中の送電線で作業員が直接作業しない設計へ
- 継続運用:停電を伴わない保守により供給リスクを下げる
- 環境:ヘリ使用の削減によりCO₂排出を抑える(運用面の脱炭素)
これ、建設の安全管理で言えば「高所作業・危険作業の置換」、観光で言えば「設備停止を最小化して稼働率を守る」に直結します。投資が入るのも納得です。
建設業界のAI導入で効く視点:ロボットは“入口”、勝負はデータ
答えを先に言うと、AI導入の成否は、機械を入れたかではなく“データが回るか”で決まります。ハイボットが強いのは、ロボット単体ではなく、デジタルプラットフォーム「HiBox」を通じて、ロボットハードウェア×AI解析を一体で提供している点です。
「点検の自動化」から「保全の予測」へ
建設現場やインフラ保全でよくある失敗は、「ドローンで撮って終わり」「画像はあるが判定は人頼み」になってしまうことです。撮影や走行は自動化できても、次の意思決定(補修の優先順位、予算配分、停止計画)が人の勘に戻る。
一方で、ロボットで取得したデータがAIで整流されると、次が現実になります。
- 異常兆候の自動抽出(ひび割れ、腐食、ボルト緩みなど)
- 重要度スコアリング(危険度・影響度・緊急度)
- 補修計画の最適化(工程管理、資材手配、職人アサイン)
つまり、点検DXは“撮る”より“決める”の自動化が本丸です。
BIM・設備台帳とつながった瞬間に、現場は変わる
「建設業界のAI導入ガイド:生産性向上と安全管理」の流れで言えば、次の一手は明確です。点検結果をBIM/CIMや設備台帳、工事写真管理と連携し、現場で使える形(指示書、工程、見積)に変換する。
ここがつながると、AIは“現場の忙しさを増やすツール”ではなく、“現場の手戻りを減らす仕組み”になります。
なぜ今「危険作業の自動化」が加速するのか:人手不足と責任の問題
答えはシンプルで、危険作業を人で回し続けることが、採用・教育・コンプライアンスの面で限界だからです。
送電線保守は典型的な危険作業です。建設でも同じで、足場、高所、狭所、暗所、有害環境は常に存在します。人手不足の中で、熟練者が減り、若手が増えない状況では、現場はこうなりがちです。
- 安全指導が属人化する(「見て覚えろ」になりやすい)
- KY(危険予知)が形骸化する(書類だけ増える)
- 事故が起きた時の責任コストが跳ね上がる
だから私は、危険作業の自動化は「効率化」より先に「経営防衛」だと思っています。投資家が評価するのも、ここです。
観光・ホスピタリティにも直結:AIは“接客”より“裏方”から効く
観光・ホスピタリティ業界でAIというと、チャットボットやレコメンドが注目されがちです。でも実務で効く順番は、むしろ逆。
結論:お客様が気づかない“止まらない運用”を作った施設が強いです。
送電線の「停電ゼロ保守」は、ホテルの「稼働率防衛」と同じ
インフラで停電を避けるのと同じで、ホテル・旅館・大型施設は、設備停止が売上に直撃します。
- 空調チラーの不具合 → 客室クレーム → 返金・評価低下
- エレベーター停止 → 動線悪化 → 高齢者・団体の満足度低下
- 温浴設備の停止 → 体験価値の喪失 → 再訪率低下
ここに、AIとロボティクスの考え方がそのまま移植できます。
- 点検ロボ/センサーでデータ取得
- AIで異常兆候を早期検知
- 設備保全を計画化し、繁忙期(年末年始・春休み前)を避けて実施
2025年12月のいまなら、年末年始のピーク対応がまさに勝負どころです。「壊れてから呼ぶ」保全では、現場もお客様も守れません。
人手不足対策としてのAI:省人化ではなく“判断の標準化”
ホスピタリティ現場でAIが効くのは、単純な省人化よりも、判断の標準化です。
- 設備アラートの一次判定(緊急・要経過観察・誤検知)
- 作業手順の提示(写真付きのチェックリスト自動生成)
- ベンダー依頼文の自動作成(型番、症状、ログ添付)
熟練者が不在でも一定品質で回る。ここが現場体験を底上げします。
現場AI導入の進め方:まずは「危険×停止×属人」を潰す
答えは、テーマの選び方を間違えないことです。AI導入は“派手な機能”から入ると失敗します。現場で費用対効果が出やすいのは、次の条件を満たす領域です。
導入テーマの選定チェックリスト
- 危険がある(高所、狭所、感電、化学、暗所など)
- 止めたくない(稼働率・供給・生産に直撃)
- 属人化している(ベテランの勘、紙台帳、口頭指示)
- データが取れる(画像、熱、振動、音、電流、ログ)
送電線の活線保守は、この条件を全部満たしています。だから投資も人材も集まる。
小さく始めるなら、3ステップで十分
- データ取得の標準化:撮影角度、頻度、保存先、命名規則を決める
- AIで一次判定:異常候補の抽出と、人のレビュー工数削減
- 運用に組み込む:工程管理・発注・報告書まで自動で流す
ここまでやると「実験」ではなく「業務」になります。
現場DXは、PoCの成功より“運用に残る仕組み”が価値。
次に起きること:ロボットとAIは「設備」ではなく「サービス」になる
ハイボットが既にグローバルで展開しているように、点検・保守は**RaaS(Robot as a Service)**やサブスク型に寄っていきます。建設・施設・観光も同じです。
- 初期投資を抑え、月額で導入
- 取得データはクラウドで蓄積
- AIモデルが更新され、年々判定精度が上がる
これが進むと、差がつくのは「どのロボットを買ったか」ではなく、どれだけ早くデータの学習サイクルを回したかになります。
観光・ホスピタリティ業界にとっては、稼働率・レビュー・再訪率に影響する“裏側の品質”を、AIで数字として管理できる時代が来ます。私はこれはかなり大きい変化だと思っています。
最後に。あなたの現場(建設でも、施設運営でも、宿泊でも)で、**「止めたくないのに、止まりがちな設備」**は何でしょう?そこからAI導入を始めるのが、いちばん現実的です。