AIで伸ばす学生発の宿泊プラン:蒲田の成功に学ぶ

観光・ホスピタリティ業界におけるAIの役割By 3L3C

学生企画の蒲田・宿泊プランは「特化型体験」の好例。AIで個別化・多言語化・運用改善まで伸ばす実務フレームを解説。

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AIで伸ばす学生発の宿泊プラン:蒲田の成功に学ぶ

受験シーズンの1〜3月は、ホテルにとって「稼働の山」と「需要の偏り」が同時に起きやすい時期です。出張・受験・卒業旅行が重なり、予約は動くのに、体験設計が追いつかないことが多い。ここを放置すると、価格競争に巻き込まれて終わります。

そんな中、東京都大田区の蒲田で面白い事例が出ました。日本工学院専門学校の学生が、ホテルと連携して2種類の宿泊プランを企画し、実際に販売まで持っていったというニュースです。テーマは「験担ぎ×とんかつ」と「映画・ドラマの聖地巡礼」。尖っていて、地域の文脈にも合っている。

この話を「学生の良い取り組み」で終わらせるのはもったいない。特化型の体験を作る発想そのものが、観光・ホスピタリティにおけるAI活用と相性抜群だからです。この記事では、蒲田の事例をヒントに、AIで「体験の個別化」と「売り方の再現性」をどう作るかを整理します。

学生企画の宿泊プランが示した「売れる体験」の条件

結論から言うと、今回のプランは「地域資産×目的来訪×導線設計」が揃っているのが強いです。ホテル単体の魅力ではなく、**滞在の理由(Why)**を作れている。

日本工学院とホテル オリエンタル エクスプレス 東京蒲田の連携では、学生40名が9チームに分かれ、数カ月かけてリサーチ・企画・プレゼン・店舗交渉までを実施。最終的に採用されたのが以下の2プランでした。

受験生応援「運気もカツも上げ揚げプラン」

このプランは受験期ど真ん中の需要を、真正面から取りにいっています。蒲田の「とんかつ激戦区」という地元の強みを使い、複数店舗・神社・特典をセット化。宿泊者にオリジナルマップを渡すことで、行動が発生する設計になっています。

ポイントは、単なる飲食紹介ではなく、

  • 勝負時の縁起(験担ぎ)という強い動機
  • “選べる”店舗ラインナップ(8店舗)
  • 神社(2社)と特典で行動の背中を押す

がセットになっていること。体験が「思いつき」ではなく「導線」になっています。

「聖地巡礼〜蒲田、あの名シーンに立つ〜」

もう一つは、蒲田の映画文化(松竹蒲田撮影所の系譜)と、近年の映画・ドラマの舞台としての話題性を束ねた「聖地巡礼」プラン。こちらもマップ+クーポン+特典+SNSキャンペーンという構成で、滞在中のストーリーを作っています。

観光は「見た」より「語れる」が勝ちます。聖地巡礼は、語りやすい。写真も撮る。投稿もする。ホテルにとっては、広告費をかけずに露出が生まれやすい設計です。

ここからが本題:この“尖り”をAIで量産できる

答えはシンプルで、人が考える「企画の芯」を残したまま、AIで“個別化”と“運用”を自動化できます。学生企画が示したのは「良い体験の型」で、AIはそれをスケールさせる役割を持てます。

AIが得意なのは「同じテーマを、違う人向けに組み替える」こと

例えば「験担ぎ×とんかつ」は同じでも、客層によって最適解は違います。

  • 受験生:移動の少なさ、静かな時間帯、消化に優しい選択肢、応援メッセージ
  • 保護者:待ち時間の少なさ、安心感、神社の参拝作法の説明
  • 出張者:短時間で回れる導線、領収書、翌朝の移動に強いルート
  • 海外旅行者:宗教・食習慣への配慮、英語・中国語での背景説明

これを手作業で作ると破綻します。AIなら、滞在目的・同行者・食の制約・移動手段・言語を入力にして、プラン内のマップ文面やおすすめ順を出し分けられます。

「体験の芯は一つ。説明と導線は何通りでも作れる」——これがAI向きの仕事です。

多言語対応は“翻訳”ではなく“文化翻案”が必要

聖地巡礼はインバウンドと相性が良い一方で、説明が直訳だと刺さりません。

AIを使うなら、

  • 作品の背景(ネタバレ回避)
  • 写真を撮るべきポイント
  • その場所が象徴する感情(例:別れのシーン、再会のシーン)

まで含めて「体験の解像度」を上げたい。観光の満足度は情報量ではなく、納得度で決まるからです。

実務に落とす:ホテル・DMOが使えるAI活用フレーム(5ステップ)

ここでは「導入しやすさ」を優先して、明日から検討できる形に分解します。

1)データを集める:予約前後の“意図”を取る

必要なのはビッグデータではありません。まずは予約導線で次を取れれば十分です。

  • 滞在目的(受験/出張/観光/推し活)
  • 同行者(1名/家族/友人)
  • 食の制約(NG食材、宗教、アレルギー)
  • 言語
  • 到着・出発の予定時間

これだけでAIの出力精度が上がります。

2)体験を部品化する:「店」「時間」「移動」「一言」のセット

学生企画の良さは、店舗と特典を“マップ化”した点にあります。AI活用ではさらに、体験を部品(モジュール)に分けます。

  • 店舗・スポット情報(営業時間、混雑傾向、価格帯)
  • 1滞在で回れる所要時間モデル
  • 写真映えポイント
  • 店主・地域のストーリー(短文で)

部品化できると、組み替えが速い。

3)生成する:客ごとに「1日プラン」を自動作成

AIにやらせるべきは、パンフの文章よりも「行動計画」です。

  • 14:30 チェックイン
  • 15:00 聖地巡礼スポットAで撮影
  • 16:00 近隣の町工場展示(ホテル館内)
  • 18:00 焼肉店(混雑回避で早め)
  • 20:00 投稿用の写真テンプレ案内

こういう“旅程”は、体験価値を一段上げます。

4)運用する:フロント負荷を下げ、問い合わせを減らす

特化型プランは問い合わせが増えがちです。

  • 「神社は何時まで?」
  • 「子ども連れでも大丈夫?」
  • 「撮影マナーは?」

ここをAIチャット(館内案内・地域案内)で吸収できると、スタッフは接客のコアに集中できます。私はここが一番効くと思っています。

5)改善する:SNS・レビューを“次の企画”に変える

聖地巡礼プランはSNSキャンペーンも実施しています。投稿やレビューは宝の山です。

AIでできるのは、

  • 投稿文の傾向分析(何が刺さったか)
  • 不満の分類(混雑、営業時間、距離、言語)
  • 次のルート候補の抽出

つまり、運用しながら企画が育つ状態を作れます。

2025年末〜2026年初の文脈で考える:受験・推し活・近場旅

2025/12/27の今、ホテルの短期施策で強いのは「目的特化」です。遠出が難しい層でも、

  • 受験前の前泊
  • 推し活(聖地巡礼含む)
  • 近場の食・街歩き

は動きます。だからこそ、今回の蒲田のような企画は再現性があります。

ただし、特化型を増やすほど運用が詰まる。ここでAIが効きます。体験の種類を増やしても、スタッフの負担を増やさない。この設計に踏み込めた事業者が、2026年の勝ち筋を作ります。

次にやるなら:学生の発想×AIで「地域体験OS」を作る

私は、学生企画の価値は「若い感性」だけじゃないと思っています。現地を歩いて、店と交渉して、地元の言葉で組み立てた体験だから強い。その“現地の解像度”にAIを足すと、届け方が一気に広がります。

やるべき次の一手は派手ではなく、実務的です。

  • 特化型プランを3本作る(受験・聖地巡礼・町工場)
  • 予約時に5項目だけ聞く(目的・同行者・言語・制約・時間)
  • AIで「旅程」と「案内」を出し分ける

これだけで、同じ地域資産が“違う商品”に見えてきます。

観光・ホスピタリティ業界におけるAIの役割は、業務効率化だけではありません。地域の魅力を、客一人ひとりの文脈に翻訳することです。あなたの街なら、どんな「尖った体験」が作れそうですか。

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