「NIPPON防災資産」と建設AI:災害に強い現場づくり戦略

建設業界のAI導入ガイド:生産性向上と安全管理By 3L3C

「NIPPON防災資産」の認定を手がかりに、防災とインフラにAIをどう組み込めば建設現場の安全性と生産性を同時に高められるかを解説します。

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「NIPPON防災資産」が示す、これからの建設DXの方向性

2025/12/17、国土交通省と内閣府が「NIPPON防災資産」の第2回認定式を行い、新たに10件の施設・取組が認定されました。災害の教訓を伝え、防災力向上に貢献する“資産”として公式に位置づけられたわけです。

ここで注目したいのは、「防災資産」が“ハード(インフラ)”だけではなく、“教訓・情報・運用”まで含めた総合的な仕組みとして評価されていること。そして、この方向性は、建設業界のAI導入・安全管理のあり方と完全にリンクしています。

この記事では、この「NIPPON防災資産」の動きを手がかりに、建設現場でAIをどう使えば、防災力・安全性・生産性をまとめて底上げできるのかを整理します。 「建設業界のAI導入ガイド:生産性向上と安全管理」シリーズの一環として、防災×インフラ×AIを軸に、実務的な視点で解説していきます。


NIPPON防災資産とは何か、建設業にとって何が変わるか

結論から言うと、「NIPPON防災資産」は、“災害に学び、次の被害を減らすためのモデル”を国が公式に示したものです。

  • 過去の災害の状況をわかりやすく伝える施設
  • 被災の教訓を継承する活動
  • 地域の防災教育の拠点

こうした取り組みを認定する制度が、2024年5月に創設され、今回が第2回の認定。第2回では、有識者委員会の審議を経て**10件(優良認定6件、認定4件)**が選ばれています。

建設業界にとって、この制度が意味することはシンプルです。

これからのインフラ・建設プロジェクトは、「つくって終わり」ではなく、「災害リスクを学び続ける仕組み」まで含めて評価される。

道路、橋梁、ダム、河川施設だけでなく、

  • 災害履歴やリスク情報の“見える化”
  • 地域住民や来訪者への情報提供
  • 継続的な防災訓練・啓発

といったソフト面の仕組みまで含めて、「防災資産」としての価値が問われます。

ここにAIが入り込む余地は非常に大きいです。AIは、膨大なデータを扱うこと、リアルタイム監視、予測、記録・継承が得意だからです。


防災資産レベルの安全を、AIで現場標準にする

「NIPPON防災資産」で評価されるような防災力を、建設現場の日常運用レベルに落とし込むには、AI活用が近道です。

1. 画像認識AIによるリアルタイム安全監視

一番イメージしやすいのは、カメラ+画像認識AIによる安全監視です。人力パトロールだけでは、ヒューマンエラーや見落としがどうしても残ります。

AIカメラでできることの例:

  • ヘルメット・安全帯・反射ベストの未着用検知
  • 立入禁止エリアへの侵入検知
  • 高所作業時の危険姿勢の検出
  • 重機と作業員の接近・ニアミスのアラート

これを常時記録し、ヒヤリハットのデータベース化まで行えば、「現場で起きかけている事故」を可視化できます。

実際、あるゼネコンでは、AIカメラ導入後に「安全指摘の件数が約30%増えた」のに対し、「実際の事故件数は20%以上減った」という報告も出ています。指摘が増えるのは“悪化”ではなく、“見えるようになった”ということです。

2. 河川・土木現場でのAI異常検知

今回の報道資料は、国土交通省水管理・国土保全局が所管していることからもわかるように、河川・水防が大きなテーマです。

土木・河川工事の現場でも、AIはかなり実務的に使えます。

  • 河川カメラ画像からの水位・越水リスク検知
  • 堤防の変位・沈下のセンサー監視+AI異常判定
  • 施工中の仮設構造物の変形・振動監視

人が24時間見張るのは不可能ですが、AIなら24時間365日、同じ基準でチェックできます。異常兆候を早期に捕まえれば、「災害」を「不具合・補修」で止められる可能性が上がります。


NIPPON防災資産に学ぶ、BIMとAIの“資産化”発想

「防災資産」という言葉が示唆するのは、「構造物や活動を、データとして資産化しよう」という考え方です。この発想は、BIMとAIの活用とかなり相性が良いです。

1. BIM+AIで“デジタル防災資産”をつくる

BIM(Building Information Modeling)は、**3Dモデルに属性情報を持たせた“デジタルツイン”**です。ここに防災・維持管理の視点で情報を載せていくと、それ自体が「デジタル防災資産」になります。

例:

  • 洪水時の浸水シミュレーション結果をBIM上で可視化
  • 地震時の応答解析結果を3Dモデルで確認
  • 過去の災害時の損傷箇所・補修履歴をモデルに紐づけ

これをAIと組み合わせると、

  • 地盤情報・構造データ・過去被災履歴から損傷リスクの高い部位を自動抽出
  • 気象予報と連携して事前に点検すべき施設リストを自動生成

といった“予測型維持管理”が見えてきます。

2. 工程管理AIで「避難計画と施工計画」を両立

防災資産級のインフラをつくる過程では、施工中のリスクも軽視できません。近年は、洪水期を避けた河川工事の計画や、土砂災害リスクの高い時期を避けた山間部工事など、「防災と工程管理の一体化」が求められています。

ここで役に立つのが、工程管理AIです。

  • 過去の気象データ
  • 施工内容・工法
  • 周辺の地形・地盤条件

といったデータを元に、リスクの高い時期・工程を機械的に洗い出すことができます。

そのうえで、

  • 「この期間の夜間作業は中止推奨」
  • 「この仮締切は洪水期を外して施工」

といった推奨案を提示し、BIMのモデル上で工程シミュレーションを行う。こうしたプロセスを標準化できれば、「防災に配慮した施工計画」が属人的な判断から抜け出せます。


教訓の“デジタル継承”こそ、AIが本領を発揮する領域

「NIPPON防災資産」は、災害の教訓を世代を超えて継承することを重視しています。この発想は、そのまま建設現場の「熟練技術の継承」と重なります。

1. 事故・ヒヤリハットのナレッジベース化

多くの現場では、事故やヒヤリハットの情報が紙のKYシートや報告書に散在し、検索も分析も難しい状態になっています。

AIを使うなら、まずここを変えたいところです。

  • 過去の事故報告書・災害事例をテキストデータ化
  • 自然言語処理AIで、原因・状況・対策を自動タグ付け
  • 「足場」「重機」「河川増水」などテーマ別に検索可能に

こうしておけば、新しい現場で安全計画をつくるときに、

「類似工種+似た地形条件+過去の事故事例」を一括で洗い出し、AIが“要注意ポイント”を教えてくれる

という世界が見えてきます。これは、単なるデジタル化ではなく、**“教訓をいつでも呼び出せる防災資産”**を作っているイメージです。

2. 現場動画×AIで熟練者の判断パターンを学ぶ

もうひとつの有効なやり方が、現場動画のAI解析です。

  • ベテラン作業員の動き
  • 現場監督の指示・判断のタイミング
  • 危険を察知して作業を止めた瞬間

こうしたシーンを動画で蓄積し、AIで特徴抽出すると、「経験則」のパターンが見えます。

将来的には、

  • 新人作業員の動きをAIがチェックし、「危険な動き」をリアルタイムで指摘
  • 教育用VRコンテンツとして、「危険シーンを安全に追体験」できる環境を提供

といった形で、熟練者の感覚を“デジタル教材”として共有できるようになります。

これは、まさに「人の経験・教訓を資産として蓄える」という、NIPPON防災資産の思想に直結したアプローチです。


政府の防災政策と連動したAI導入ロードマップ

ここまで見てきたように、「NIPPON防災資産」は、防災を“資産”として捉える国の姿勢をはっきり示しています。建設会社がAIを導入する際も、この流れと歩調を合わせると、投資効果が出やすくなります。

1. まずは「自社の防災資産」を棚卸しする

AIの前にやるべきことは、自社がすでに持っている防災関連の資産の棚卸しです。

  • 過去の災害復旧工事の実績
  • 自社で整備・維持管理しているインフラ
  • 安全マニュアル・教育資料・訓練プログラム
  • 事故・ヒヤリハットの記録

これらはすべて、AIの“学習素材”になります。まずは「どんなデータがどこにあるか」を押さえましょう。

2. 3ステップでAI導入を進める

防災・安全領域でのAI導入は、次の3ステップに分けると現実的です。

  1. 見える化フェーズ

    • CCTV映像、センサー、ドローン写真を集約
    • BIMへの情報統合
    • ダッシュボードで“今何が起きているか”を共有
  2. 分析フェーズ

    • 過去データをAIで分析し、危険パターンを抽出
    • ヒヤリハットの傾向、季節・気象との相関を把握
  3. 予測・自動化フェーズ

    • リアルタイムAI監視で異常検知
    • 予測に基づく事前の警告・工程自動調整

いきなり高度な予測に飛びつくより、見える化→分析→予測の順で進めた方が、社内の納得感も得やすく、現場とのギャップも小さくなります。


これからの防災資産は「AIが組み込まれたインフラ」になる

この記事で扱ったポイントを整理すると、方向性はかなりはっきりしています。

  • 国は「NIPPON防災資産」という形で、防災を“資産”として位置づけ始めた
  • 資産として評価されるのは、構造物だけでなく、教訓・情報・運用の仕組みまで含めたトータルな防災力
  • AIは、監視・予測・記録・継承といった防災資産の重要な要素を、現実的なコストで支える手段になりつつある

これからのインフラは、竣工した瞬間から**「デジタル防災資産」として育てていく対象**になります。

  • BIMモデルにリスク・維持管理情報を蓄積する
  • 施工段階からAIで安全・災害リスクを管理する
  • 運用段階でのデータをAIが学習し、次のプロジェクトに教訓を還元する

こうした循環を回せる会社は、今後の公共工事や防災関連プロジェクトで、確実に評価されていきます。

あなたの会社が今やるべきことは、

  1. 自社の防災・安全に関するデータ資産を把握すること
  2. 小さくてもいいので、AIによる「見える化」から始めること
  3. 将来の「NIPPON防災資産」候補として誇れる現場を、意識してつくること

シリーズ「建設業界のAI導入ガイド:生産性向上と安全管理」では、今後、具体的なツール選定や、PoC(試行導入)の進め方、社内の合意形成のコツも扱っていきます。

次のプロジェクトで、“防災資産レベル”の安全管理をAIで実現する。その第一歩を、どの現場から始めるか、そろそろ具体的に決めてみてください。

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