i-Construction2.0時代のBIM/CIMとAI活用 完全ガイド

建設業界のAI導入ガイド:生産性向上と安全管理By 3L3C

国交省のi-Construction2.0とBIM/CIM推進の動きを軸に、建設現場でAI×BIM/CIMを使って生産性と安全性を同時に高める実践ステップを整理します。

i-Construction2.0BIM/CIM建設業AI建設DX安全管理生産性向上
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人が3割減っても現場を止めないために、いま何をするか

国土交通省は、2040年度までに「建設現場の省人化3割、生産性1.5倍」というかなり踏み込んだ目標を掲げています。単なるスローガンではなく、その具体策として動いているのが i-Construction2.0BIM/CIMの徹底活用 です。

今回公表された「令和7年度 第3回BIM/CIM推進委員会幹事会」の案内や、BIM/CIMポータルサイトの更新は、一見お知らせレベルの話に見えます。ただ、現場サイドから見ると、「これからの10年で会社が生き残れるか」を左右する転換点のシグナルでもあります。

この記事では、この国交省の動きを手がかりに、建設会社が AI×BIM/CIMで生産性と安全性を同時に高める実践ステップ を整理します。同じシリーズの「建設業界のAI導入ガイド」として、実務者目線で噛み砕いていきます。


i-Construction2.0とBIM/CIMの本質:データで現場を回す

結論から言うと、i-Construction2.0の狙いは「人の勘と経験で回していた現場を、データで回る現場 に変えること」です。その中核にあるのがBIM/CIMです。

国交省は、

2040年度までに建設現場の省人化を少なくとも3割、すなわち生産性を1.5倍に向上

というターゲットを明示しており、そのトップランナー施策として 「データ連携のオートメーション化」 を掲げています。この文脈でBIM/CIMは、単なる3Dモデルではなく、AI活用を含む“建設DXのベースインフラ”と考えた方が正確です。

BIM/CIMがAI活用の「土台」になる理由

BIM/CIMは、調査・測量・設計・施工・維持管理までの情報をデジタル化し、受発注者間で活用・共有しやすくする仕組みです。ここにAIが乗ると、一気にできることが増えます。

例えば:

  • 設計段階
    • AIがBIMモデルを読み取り、干渉チェックやコスト概算を自動実行
  • 施工段階
    • 施工履歴・出来形データをCIMモデルに紐づけ、進捗と出来高を自動集計
    • ドローン測量データをAIが解析し、土量差や安全リスクを可視化
  • 維持管理段階
    • 点検画像をAIがBIM/CIMモデル上の部材に紐づけ、劣化箇所や補修履歴を一元管理

AIを単体で導入しても、元となるデータがバラバラ・紙ベースのままだと効果は頭打ちになります。BIM/CIMで「データの地ならし」をしておくことが、AI活用の前提条件 です。


「モデル事務所」とは何か:国交省が見せようとしている未来像

今回の幹事会では、「i-Constructionモデル事務所」におけるBIM/CIMの取組状況が報告されます。ここがポイントで、モデル事務所は単なるお手本というより、試験場兼ショールーム のような役割を持っています。

モデル事務所で試していること

公開情報や各地の取り組みから整理すると、モデル事務所では次のような実験的・先導的な運用が行われています。

  • 設計~施工~維持管理までを前提にしたBIM/CIMモデルの作成
  • 発注者・受注者・協力会社が同じデータを見ながら進行管理
  • 施工データ(出来形・品質・安全記録)をモデルに紐づけ
  • AIを用いた出来形判定や進捗管理の一部自動化
  • 遠隔臨場、リモート会議とBIM/CIMの連携

ここで得られたナレッジが、基準類の見直しや自治体案件への展開のベースになります。つまり、数年後の「当たり前」が、このモデル事務所の実験から決まっていく ということです。

民間にとっての意味:待っているだけは危険

この流れの中で、民間側に求められるのは次の2つです。

  1. 国の方向性に沿った BIM/CIM+AIの社内標準 を早めに作り始める
  2. モデル事務所やBIM/CIMポータルサイトの情報を 自社のルールに翻訳 する

多くの会社が失敗するのは、「国の様子を見てからやる」という姿勢です。実際には、制度・ガイドラインは先に進んでおり、入札要件や元請の要求事項に反映されるころには「すでに手遅れ」ということになりがちです。


BIM/CIMポータルサイト刷新の狙いと活用法

国交省は今回、BIM/CIMポータルサイトをリニューアルし、直轄事業以外も含めた 「多様な主体の好事例」 の募集と掲載を始めました。これは、建設会社にとってはかなり大きなチャンスです。

なぜ好事例募集が重要なのか

好事例募集の裏には、こんな狙いがあります。

  • 直轄工事だけでなく、民間や自治体、サブコンの取組まで見える化したい
  • 「BIM/CIM=大規模プロジェクト」のイメージから脱却させたい
  • 中小企業でも真似できる 現実的な運用例 を増やしたい

つまり、規模を問わず、自社なりに工夫したBIM/CIM・AI活用を対外的に発信できる場 ができた、ということです。

どんな事例を出すと評価されやすいか

僕が支援してきた会社の事例感覚でいうと、次の3条件を満たすと評価されやすく、かつ他社からも真似されやすい「良い事例」になりやすいです。

  1. 目的がはっきりしている
    • 例:出来形管理の省力化、安全巡視の頻度維持、若手育成
  2. 効果が数字で出ている
    • 例:出来形確認時間を40%削減、是正回数を30%削減
  3. 現場が無理なく回せている
    • 例:ベテランでも使いこなせる運用マニュアル、簡単な教育プラン

AI活用も同様で、

  • 画像認識AIで養生不備を検知し、是正までの時間を短縮
  • 施工機械の操作ログをAIで解析し、熟練オペレーターの動きを定量化

といった内容は、BIM/CIMモデルと連携させると非常に説明しやすくなります。


現場でのAI×BIM/CIM活用アイデア:生産性と安全を両立させる

国の動きを押さえたうえで、「で、自社は何からやるか?」という話に落としていきます。ここでは、2020年代後半~2030年前半に現実的に狙えるレベル のAI×BIM/CIM活用アイデアを、ジャンル別に整理します。

1. 画像認識AI+CIMによる安全監視

安全対策は、AI導入の「入り口」として非常に相性が良い分野です。

具体例

  • 高所作業時のハーネス未装着を、カメラ映像からAIが検知
  • 立入禁止エリアへの侵入をリアルタイムで警告
  • 重機と作業員の距離をAIが常時計算し、危険接近をアラート

これらをCIMモデルの座標情報と連携させることで、

  • 危険箇所をモデル上にヒートマップ表示
  • ヒヤリハット発生箇所を時系列で分析
  • 安全対策の優先順位を「勘」ではなくデータで決定

といった運用が可能になります。

2. 工程・出来高管理の自動化

工程会議で「どこまで終わっているのか」を誰も正確に言えない──これは多くの現場で起きています。ここにAIとBIM/CIMを入れると、状況はかなり変わります。

典型的なワークフロー

  1. 週1回、ドローンや360度カメラで現場を撮影
  2. AIが映像から出来形・進捗を自動判定
  3. 結果をCIMモデル上に反映し、出来高を自動集計
  4. 工程表とのズレを自動算出し、要注意工程を可視化

これにより、

  • 進捗報告資料作成の時間を大幅削減
  • 工程遅延を早期に検知し、対策の猶予を確保
  • 若手現場代理人でも、客観的な根拠を持って説明可能

といった効果が期待できます。

3. 熟練技術のデジタル継承

「うちの一番うまいオペレーターがそろそろ定年で…」という相談は、本当に多いです。AI×BIM/CIMは、この課題にもかなり効きます。

例:重機オペレーションの見える化

  • GNSS+機械制御データをCIMモデルに紐づけて保存
  • 熟練者と若手の操作軌跡・動きの滑らかさをAIが比較分析
  • 土工量、燃費、時間あたりの出来高などを自動算出

こうすることで、

  • 「うまさ」を数値で説明できる
  • 若手向けのトレーニングメニューを客観的に設計できる
  • VR/シミュレータ教育にも展開しやすい

というメリットが出てきます。ここでも、CIMモデルが「現場空間の共通言語」として効いてきます。


2025〜2030年にやるべきロードマップ

最後に、「今から何を、どの順番で進めるか」をシンプルなロードマップに落としておきます。規模問わず、ここから逆算して社内計画を整理するのがおすすめです。

ステップ1:データの整理とBIM/CIMの最低限導入(〜2026年)

  • 測量・設計図書・出来形写真などのデジタル保管ルールを決める
  • 小規模でもよいので、1〜2件でCIMモデルを試験導入
  • 現場・設計・積算が同じ3Dモデルを見る体験を社内で共有

ステップ2:AIの小さな実証から始める(〜2027年)

  • 画像認識AIによる安全監視(限定エリアから)
  • ドローン+AIによる出来形確認の試行
  • 1現場でよいので、AI活用の効果を数字で計測

ステップ3:BIM/CIM+AIの標準化(〜2030年)

  • 社内標準のBIM/CIMモデリングルールとデータ連携手順を整備
  • 成功したAI活用パターンを基に、複数現場で横展開
  • 成果を社内外に発信し、人材採用・受注力の向上にも活かす

ここまで進めば、国が目指す「省人化3割」に対して、自社なりの再現性あるストーリーを持てるようになります。


これからの10年、AIとBIM/CIMを“攻めの投資”に変える

国交省のBIM/CIM推進委員会やポータルサイト更新は、単なる行政のイベントではなく、「これからの建設会社の標準装備」を宣言しているようなものです。AIも同じで、趣味的な実証にとどめるか、事業の柱に育てるかで、10年後の姿はまったく変わります。

建設業界のAI導入ガイドとして言い切ると、

BIM/CIMを整えずにAIだけ入れても効果は限定的。逆に、BIM/CIM+AIをセットで考えられる会社は、人手不足でも仕事を選べる立場になれる。

という構図です。

自社の現場で、どこからならAI×BIM/CIMを始められるか。安全監視か、工程管理か、熟練技術の継承か。一つでも「ここならできそう」というテーマが見えたら、そこがスタート地点です。

次のシリーズ記事では、実際のAIツール選定のポイントや、現場への浸透方法も掘り下げていきます。いまのうちに、自社のデータとBIM/CIMの現状を、冷静に棚卸ししておくことをおすすめします。