ENR受賞のParklane Parkを題材に、AI・ドローン・3Dモデルを活用した都市公園整備の生産性向上と安全管理のポイントを解説します。

AIで「25エーカーの公園」を期限通りに完成させた現場のリアル
20.4百万ドルのプロジェクトを、遅延もせず予算内で完了させた公園整備現場があります。米・ポートランド東部のParklane Parkです。5エーカーだった既存公園を25エーカーへ拡張し、サッカー場、スケートパーク、3つの遊具エリア、コミュニティガーデン、ドッグランなどを備えた地域のハブへと生まれ変わらせました。
このプロジェクト自体は、見た目は「よくある都市公園整備」に見えるかもしれません。ただ、施工プロセスに目を向けると話は変わります。ドローン・3Dモデル・GPS建機といったデジタルツールを組み合わせ、実質的にAI/BIM連携のワークフローを構築していたからです。
この記事では、ENR Best Projects 2025「Best Landscape/Urban Development」を受賞したParklane Parkを題材に、日本の建設業がAIを導入して生産性と安全を高めるためのヒントを具体的に整理します。「建設業界のAI導入ガイド:生産性向上と安全管理」シリーズの一環として、公園・都市開発プロジェクトでAIをどう使いこなすかを掘り下げます。
Parklane Parkプロジェクトの全体像と課題
Parklane Parkは、単なる公園拡張ではなく、複雑な地盤条件と厳しい環境制約、そして予算制約が絡み合う案件でした。ここを押さえておくと、なぜAIやデジタル施工が効いたのかが見えてきます。
元採石場・Title-D指定というハードモード
プロジェクトの特徴的な条件は次の通りです。
- 元採石場の土地で、約 75,000立方ヤード(約5.7万m³)の盛土が必要
- Title-D指定により、掘削した土を現場外へ搬出できない(日本ならマニフェスト管理がさらに重くなるイメージ)
- 公園面積は5エーカーから25エーカーへ拡張
- サッカー場、バスケット・テニスコート、スケートパーク、3つの遊具、コミュニティガーデン、ドッグラン、パビリオンなど多種多様な施設を一体整備
そのうえで、初期概算8百万ドル → 30%設計時に3千万ドル近くまで膨張という、予算面での危機も発生します。ここから、徹底したバリューエンジニアリングと施工計画の見直しが始まります。
予算3倍→予算内完成まで何が行われたか
予算を抑えつつ、地域コミュニティのニーズを守るために、プロジェクトチームは50%、75%、90%、IFC(施工図完成)と各段階で連続的なVEを繰り返しました。
典型的な例が、
- コンクリート舗装の一部をアスファルトや豆砂利舗装に変更
といった設計仕様の見直しです。つまり、**「価値を落とさず、コストを削る」**方向で判断を積み上げたわけです。
さらに大きかったのが、土工と材料調達の工夫です。
- 必要盛土:75,000立方ヤード
- そのうち 50,000立方ヤードを他現場から発生した非規格土を無償で受け入れ
- 圃場整備として、その非規格土にコンポストを混合し、表層6〜10インチだけを規格土で覆土
- 結果として、材料+運搬費で 100万ドル以上のコスト削減
これに加えて、既存構造物やコンクリート、鋼材など解体材を極力リサイクルし、Title-Dの制約をクリアしながら環境負荷も抑えました。
この一連のプロセスを支えたのが、**早期施工者関与とデジタルツール(実質AI的ワークフロー)**です。

早期施工者関与+AI的ワークフローがコストと工期を縮める
Parklane Parkでは、ゼネコンが着工の約2年前からプロジェクトに参画していました。ここにAIやBIM、3Dモデルを組み合わせると、都市開発・インフラ整備のプロジェクトマネジメントが一気に変わります。
2年前からの施工者関与で何が変わるか
早期関与型のメリットを整理すると、以下のようになります。
-
概算精度の向上
AI対応の積算システムやBIM数量拾いを使えば、30%設計時点でもより現実的なコスト予測が可能になります。 -
施工性を前提にした設計
施工者が設計プロセスに入ることで、「図面としては正しいが施工が難しい」設計を減らせます。AIによる施工シミュレーションもここで活きます。 -
長期材料調達とロジスティクス最適化
2年前から材料の需給や価格動向データをAIが分析し、発注タイミングや代替材料の候補を提示できれば、コストリスクを大きく下げられます。
Parklane Parkでは、パビリオンの地盤改良方法についても、事前に盛土・サーチャージを行う計画を立て、より高価な地盤改良工法を回避しています。日本でも、液状化対策や地盤改良の選定で同じ発想が使えます。
AI+BIM+ドローンで「自前測量・自前出来形管理」
Parklane Parkの現場で特に注目したいのが、ドローンと3Dモデル、Trimbleソフトウェア、GPS建機の組み合わせです。日本流に言い換えると、i-Construction+AI画像解析に近い世界です。
プロジェクトチームは、
- ドローンで現況地形を点群データ化
- それを3Dモデル化し、施工計画・出来形管理に活用
- Trimble系のソフトと連携し、自前で測量・レイアウトを実施
- GPS制御のブルドーザー・グレーダーで高精度な法面・路盤整形
を行っています。AIによる自動地形認識や出来形比較まで踏み込めば、以下のようなメリットが得られます。
- 掘削・盛土量の誤差を最小化し、残土・材料ロスを削減
- 再測量や手戻りを減らし、工程短縮
- 人手不足の中でも、少人数で広い敷地を管理
実際、Parklane Parkは2025年5月に予定通り竣工し、予算内で完成しています。地盤条件が悪く、多数の施設を同時に仕上げるプロジェクトでこの結果は、デジタル施工の効果があったと考える方が自然です。
ランドスケープ・都市開発でAIが効くポイント
公園や街区整備などのランドスケープ・都市開発案件は、「土工+舗装+外構+植栽+小規模構造物」の集合体です。ここにAIを当てはめると、意外なほどフィットします。
1. 計画段階:BIM+AIで「使われる公園」を設計する
AIは、計画段階で次のような使い方ができます。
- 近隣人口構成や移動データを解析し、利用頻度の高い時間帯やユーザー層を予測
- 日照・風向・騒音データを元に、遊具・スポーツ施設・静かなエリアの配置をAIが提案
- BIMモデルと連携し、歩行動線・視線・バリアフリー動線をシミュレーション

Parklane Parkのように、
- コミュニティガーデン
- オフリードドッグエリア
- 3種類の遊具エリア
- スケートパーク
といった多様な施設を1つの公園にまとめる場合、日本でも「誰が・どこを・どの時間帯に使うか」の設計が重要です。ここでAIを使うと、設計者の勘だけに頼らない配置計画ができます。
2. コスト・VE検討:AI積算と材料最適化
Parklane Parkでは、人の判断でコンクリート→アスファルト・豆砂利の置き換えが行われましたが、これをAIで支援することも可能です。
- BIMモデルから数量を自動拾い出し
- 材料・工法別の単価やライフサイクルコストをAIが比較
- 機能要件・維持管理条件を満たす範囲で、最も費用対効果の高い仕様を提案
特に日本の自治体案件では、予算制約が厳しい一方で維持管理費も無視できません。AIで初期費用+維持費を同時に最適化できれば、発注者にとっても施工者にとっても判断がしやすくなります。
3. 施工管理:AI画像認識で安全と品質を両立
このシリーズのテーマでもある「安全管理」にも、Parklane Parkのプロセスはヒントになります。
- 広大な敷地、重機が多い土工主体の現場
- 多数の下請・協力会社が出入り
- 完成済みエリアと施工中エリアが混在
こうした現場では、AIによる以下のような管理が有効です。
- 監視カメラ映像をAIが解析し、ヘルメット未着用・立入禁止エリアへの侵入を自動検知
- ドローン画像と3Dモデルを比較し、盛土・法面の出来形や危険箇所を自動抽出
- 作業員の動線データから、ヒヤリハットが多いポイントを洗い出す
Parklane Parkでは、ドローンと3Dモデルを使って**「完成済みエリアを傷つけない施工順序」**が組まれていました。ここにAIが加われば、
どの順番で工事を進めれば、最も安全で手戻りが少ないか
を自動提案することも現実的です。
日本の建設会社が明日から真似できる3つのステップ
「海外の成功事例を見ても、自社とはスケールも予算も違う」と感じる方もいると思います。そこで、Parklane Parkから日本の建設現場がすぐに取り入れやすいAI活用ステップを3つに絞ってみます。
ステップ1:ドローン+点群を標準化する
まずは現況把握と出来形管理のDXから始めるのが現実的です。
- 自社または協力会社でドローン測量を標準化
- 点群データを扱えるBIM/CIMソフトを1つ決める
- AIが使える出来形比較ツール(クラウドでも可)を導入

これだけでも、土工量の誤差や測量の手戻りが減り、工程と原価に直結する効果が出やすくなります。
ステップ2:AI積算・VE支援ツールで「設計変更の根拠」を強化
次に、積算とVEの判断材料をAIで厚くする段階です。
- BIMモデルから数量を自動抽出するワークフローを整備
- 材料・工法ごとの単価データベースを更新し続ける仕組みを用意
- 仕様変更案ごとのコスト・工期・CO₂排出量をAIで比較
Parklane Parkのように「コンクリートをアスファルトへ」「輸入土を他現場の非規格土へ」といった提案をする際、数値で説得できることが発注者との信頼構築につながります。
ステップ3:安全管理にAI画像認識を試験導入
最後は、安全管理へのAI活用です。いきなり全現場でやるのではなく、
- 大規模土工現場や都市開発案件など、リスクと効果が見合う現場を1〜2件選定
- 監視カメラ・ウェアラブルカメラの映像をAIで分析し、ヒヤリハット検出をテスト
- 従来のKY活動や安全パトロールと結果を比較し、運用ルールをブラッシュアップ
という順番が現実的です。AIのアラートをどう扱うかは、現場の安全担当者との対話が不可欠なので、PoC(試験導入)の中で一緒に調整していくのが良いと思います。
これからの「いい公園」は、設計だけでなくプロセスも評価される
Parklane Parkが示しているのは、見た目のデザインだけではなく、「どう作ったか」も評価される時代になっているという現実です。
- 元採石場という難条件
- 土砂搬出禁止という環境制約
- 予算膨張の危機
- 多様な施設を同時に整備
この条件下で、早期施工者関与とデジタル施工(実質AIワークフロー)を活かし、オンタイム・オンバジェットで完成させたからこそ、ENR Best Projectに選ばれています。
日本でも、これから都市公園再整備や駅前再開発、防災公園の整備など、市民に近いインフラ整備が増えていきます。そのとき、
・AIやBIMを使って、ちゃんとコストと安全を管理しているか
・環境制約をクリアしつつ、創意工夫で価値を出しているか
が、発注側・市民双方から問われていきます。
もし自社の現場で、
- 生産性と安全を同時に高めたい
- i-Construction以降の「次の一手」が見えない
- AIをどこから導入すべきか決めきれない
と感じているなら、Parklane Park型のアプローチ——ドローン+3Dモデル+早期施工者関与+AI支援のVE——を、自社の1案件で試してみる価値は大きいはずです。
次の記事では、実際に日本の現場で使いやすいAI安全監視の具体的なワークフローを、もう少し踏み込んで整理していきます。自社で試してみたいテーマがあれば、ぜひ社内のプロジェクトに当てはめてイメージしてみてください。