AI自動ショベルが変える土工現場:生産性と安全性を同時に上げる方法

建設業界のAI導入ガイド:生産性向上と安全管理By 3L3C

AI自動ショベルが土工の生産性と安全性を同時に高める時代です。米国事例を踏まえ、日本の建設会社が今すぐ取るべき現実的な一手を解説。

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建設現場の「人が足りない」は、AIショベルでどこまで解決できるか

大規模造成現場で動かす土量が数十万m³を超えるのに、オペレーターの確保は年々難しくなっています。日本でも「重機だけ並んでいて動かせる人がいない」という声は、2025年時点で珍しくありません。

そんな中、米国でAI搭載の自動ショベル(自律型油圧ショベル)が本格稼働し、すでに6万5,000立方ヤード(約5万m³)以上の土砂を自動で掘削・積込したという事例が出てきました。この記事では、その事例をベースにしつつ、日本の建設会社が「次に何をすべきか」という視点で整理します。

これは「遠い海外の話」ではなく、建設業界のAI導入ガイド:生産性向上と安全管理という連載テーマのど真ん中にくるトピックです。土工の自動化は、AIによる安全監視やBIM連携、工程最適化と同じレベルで、これからのコア技術になっていきます。


事例概要:Bedrock Roboticsの自動ショベルは何をしているのか

結論から言うと、Bedrock Roboticsは、既存の油圧ショベルに後付けキットを装着し、自律運転で土砂を掘削し、有人ダンプに積み込むところまで実用化しています。

導入現場とスケール感

  • 場所:米国南西部のエネルギー関連製造施設(約130エーカー=東京ドーム約10個分)
  • 作業内容:造成・重土工(約70万立方ヤード=約53万m³の土砂・岩盤移動を計画)
  • 実績:記事執筆時点で6万5,000立方ヤード以上を自動ショベルが施工
  • 使用機種:20〜80トンクラスまで、複数メーカーの油圧ショベルに対応

ポイントは、完全に特別な現場ではなく、通常の大規模造成工事の一部として使われていることです。ダンプトラックは人が運転し、ショベルだけが自律運転で掘削と積込を行います。

どんな技術で動いているのか

Bedrockのシステムは、主に次のような技術で構成されています。

  • LiDAR+GPS による高精度位置・地形認識
  • 周辺環境を3Dマップ化し、リアルタイムで掘削対象・ダンプ位置を把握
  • 人間オペレーターの操作データを学習したAI・機械学習モデルで掘削パターンを最適化
  • キャビン内にはモニターと非常停止系を残し、「人がすぐ介入できる」前提での自律運転

この構成は、日本でも今後導入しやすい現実的なラインです。完全無人・遠隔だけを狙うより、「AIオペレーター付きのショベル」と考えた方が理解しやすいと思います。


自動ショベルがもたらす生産性向上:どこが効くのか

AIショベルの本質的な価値は、「人を減らす」ことよりも、生産性のバラつきを減らし、一定以上のアウトプットを安定して出し続けるところにあります。

熟練オペレーターの“合体版”としてのAI

この現場では、元請けのSundt Constructionが、複数の熟練オペレーターに同じ作業をさせ、その操作データをAIに学習させています。現場担当者はこう語っています。

「複数のベテランオペレーターのノウハウを“1人分”に凝縮するようなもの」

つまり、

  • 上手い人の掘削スピード
  • 荷載せ時のダンプとの位置合わせ
  • バケットのすくい方・放し方

といった暗黙知をAIに詰め込み、常に“平均よりだいぶ上手いオペレーター”として稼働させるイメージです。

「人手不足×長時間稼働」の掛け算

日本でも、造成や太陽光発電所、物流施設造成など、僻地・広大な現場ほどオペレーターの確保が難しくなっています。自動ショベルを入れると、次のような運用が可能になります。

  • 日中:ベテランがAIショベルと通常ショベルを“2台持ち”で管理
  • 夕方以降:AIショベル主体の夜間施工(安全基準を満たせるエリアに限定)
  • 週末:人手が薄い時間帯に、限定エリアでAI施工

1人のオペレーターがAIショベルを複数台監視できるようになれば、「1人×1台」前提の生産性から抜け出せる可能性があります。

他の施工ロボットとの比較

記事では、他社の事例もあわせて紹介されています。

  • Bechtel:太陽光発電所で自律型ショベルを使ったトレンチ掘削
  • 別現場:自動杭打ち機、無人スキッドステアでのソーラーパネル搬送

共通しているのは、

  • 繰り返し作業が多い
  • 広くて単調な現場
  • 熟練オペレーターが不足している

こうした条件下で、AI・自動化はもっとも効果を発揮します。日本でも、造成・ソーラー・風力・山間部道路・採石場などが、最初のターゲットになりやすいゾーンです。


安全性へのインパクト:AIは「安全監視装置」でもある

生産性と並んで、この連載テーマで外せないのが安全管理です。AIショベルは、単にオペレーターを減らすだけでなく、安全リスクを見える化するセンサーの塊にもなり得ます。

自動ショベルだからこそできる安全対策

AI自律運転を前提にすることで、次のような安全機能を設計に組み込めます。

  • 作業範囲に人や車両が侵入した場合の自動停止
  • バケット下や旋回範囲のLiDAR監視
  • 地形データとの比較による法面の過掘削・危険勾配の検知
  • 稼働データのログから、ニアミス事象の自動抽出

従来の「オペレーターの注意力」に大きく依存した安全管理を、データとアルゴリズムで支える体制に変えていけます。

画像認識・BIMとの連携余地

このブログシリーズで扱っている、

  • 画像認識による安全監視
  • BIM・CIMモデルと連携した出来形・工程管理

と組み合わせると、AIショベルは単なる施工機械ではなく、現場のリアルタイム・センサー+アクチュエーターになります。

例えば:

  • BIMの設計地盤データと、LiDARで取得した実測地形を自動比較
  • 安全側に余掘りしすぎている箇所や、盛土不足箇所を自動でマーキング
  • 危険勾配や作業半径を超えそうな場合にAIが自ら施工パターンを変更

ここまで行ければ、「人が図面を見て判断」していた安全・品質管理の一部を、AIが先回りして補正する世界になります。


日本の建設会社が学ぶべきポイントと導入ステップ

では、日本の建設会社がこの事例から何を学び、どこから手をつければ良いのでしょうか。僕が現実的だと思うステップを、段階的に整理します。

ステップ1:データ化できていないと、AIは育たない

AIショベルの強みは「熟練オペレーターの暗黙知を学習させる」ことです。つまり、オペレーションがデータとして取得できなければ始まりません。

まずは:

  • ICT建機(マシンガイダンス/マシンコントロール)の標準化
  • 稼働データ(掘削量・燃料・アイドリング・稼働時間)の常時取得
  • 作業エリアの3D地形データ化(ドローン測量やレーザースキャナ)

このあたりをやっていないと、いきなり「自動ショベルを入れたい」とメーカーに言っても、学習させる素材がない状態になります。

ステップ2:限定エリアでの半自動運転・協調運転

次に現実的なのは、

  • 自動ブーム制御・バケットのオートレベリング
  • 積込位置だけをAIが自動補正
  • オペレーターは旋回・位置決めに集中

といった**人とAIの“協調オペレーション”**です。

こうした中間ステップを踏むことで、

  • オペレーターがAIの挙動に慣れる
  • AI側も現場ごとの癖・地盤条件のデータを蓄積できる

結果として、完全自律運転にスムーズに移行しやすくなります。

ステップ3:夜間・繰返し作業への展開

AIショベルのメリットを最大化するのは、

  • 単純だけれど量が多い
  • レイアウトが大きく変わらない
  • 人が入りにくい・危険なゾーン

への適用です。

日本での具体例としては:

  • 大規模造成のストックヤードでの積込作業
  • 砕石場での岩石積込・破砕機投入
  • トンネル坑外ヤードでのズリ処理エリア

などが候補になり得ます。最初から全部を自動化しようとせず、**「現場の一角で、再現性が高い作業」**から始めた方が、成功確率は高いです。


経営目線で見るAI建機:導入の判断軸と次の一手

AIショベルを含む建設DXで、経営者がよく悩むのが「投資判断」です。ここでは、僕が重要だと思う判断軸を3つ挙げます。

1. 労務リスクと受注機会の天秤

BedrockのCEOは、「人手不足で、そもそも受注できない仕事がある」と言っています。日本でも、

  • 僻地・長期の造成工事
  • 夜間・休日を含むインフラ工事

は、オペレーター確保を理由に見送るケースが増えています。**「現場をこなせるオペレーター数が、会社の売上上限を決めている」**状況になりつつあります。

AIショベルは、

  • 一人当たりが面倒を見られる重機台数を増やす
  • 長時間・夜間の稼働を現実的にする

ことで、実質的な施工能力(キャパシティ)を押し上げる投資と見るべきです。

2. 安全・コンプライアンス面の“守りのDX”

労基法や安全衛生法が厳格化する中で、

  • 長時間労働の抑制
  • 高齢オペレーターへの負担軽減
  • 災害時の説明責任

といった“守り”の要件も増えています。AI建機は、

  • 稼働履歴ログ
  • ニアミス検知
  • 安全機能作動履歴

といった証跡データを自動で蓄積するため、コンプライアンス対応の面でも価値があります。

3. 3〜5年で「当たり前」になる前提での準備

海外の動きを見ていると、自動運転建機は**ニッチな実験技術ではなく、労働力不足を補う“標準装備候補”**の位置づけになりつつあります。

日本でも、

  • ICT建機が「特殊なオプション」から「標準仕様」になったのと同じ流れ
  • BIM/CIMも、国交省案件を起点に民間へ拡大中

といった前例があります。AIショベルも同様に、

  • 早めにパイロット現場を持つ
  • 社内にデータ・AIリテラシーを持った人材を育てる

会社と、そうでない会社の差が、3〜5年先にかなり大きくなると考えています。


これからの土工DX:AIショベルを中心にした「スマート造成」の描き方

AI自動ショベルは、単体で眺めていると未来感のあるガジェットに見えますが、本質は「スマート造成」の一要素です。この連載テーマ「建設業界のAI導入ガイド:生産性向上と安全管理」の文脈で整理すると、次のような絵が描けます。

  • ドローン・レーザースキャナ:現況地形・出来形の3Dデータ化
  • BIM/CIM:設計・計画のデジタルツイン
  • AIショベル・自動ブル:設計と現実を結ぶ自律型施工機械
  • 画像認識・センサー:安全監視+稼働モニタリング
  • 進捗・工程AI:施工データを用いた工程最適化とリスク予測

この一連の流れの中で、AIショベルは、

「デジタルで作った施工計画を、現場でブレさせずに実行する“手足”」

として機能します。

2025年の今から準備を始めれば、2030年前後には、

  • 「自動ショベル+画像認識安全監視+BIM連携」が標準の造成現場
  • 高リスク・高負荷作業の多くをAI建機が担う現場

を、自社のプロジェクトとして語れる立場に十分なれます。


まとめ:まずは「AIで置き換えたい作業」を現場目線で洗い出す

AI自動ショベルの事例から見えてくるのは、人手不足と安全リスクに正面から向き合うためには、AIを“実働戦力”として現場に入れていくしかないという現実です。

最後に、すぐにできるアクションを整理します。

  1. 自社現場の中で、
    • 繰り返しが多い
    • 危険度が高い
    • オペレーター確保に苦労している 土工・重機作業を書き出す
  2. 既に導入しているICT建機・ドローン測量・BIM/CIMの活用度を棚卸しし、データがどこまで取れているか確認
  3. 1と2を材料に、AI建機・自動ショベルのパイロット現場候補を経営層と共有

AI建機は、突然「フル自動の現場」にジャンプする技術ではありません。データ化 → 半自動 → 限定自律運転 → 本格展開という階段をどう設計するかが、各社の腕の見せ所です。

次回以降の連載では、画像認識による安全監視や、BIM・工程AIとの組み合わせも含めて、「AI時代の建設現場の全体像」をさらに具体的に描いていきます。

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